めまい-特にメニエル氏病について  院長:本橋弘行

最近は社会環境の変化が著しく、ストレスの増加、また車社会で交通事故の多発などにより「めまい」を訴えることが多くなりました。「めまい」は色々な病気に現れる症状です。例えば耳鼻科領域の内耳から、脳外科的疾患,整形外科領域の頚部・腰部疾患,内科領域の循環器・自律神経系・代謝系・内分泌系疾患など、更に眼科疾患,歯科疾患からも出現します。患者さんはその「めまい」を訴える時に色々な感覚で表現します。回転感(自分が回る,周囲が回る),転倒感,浮動感、昇降感,浮遊感,眼前暗黒感,気の遠くなるような感じ,立ちくらみ,自己不安定感など多くの訴えがありますが、これらの訴えは全て「めまい」という分類に入ります。

従来、めまい・耳鳴り・難聴の3つの症状で知られているメニエル氏病という病気は、耳の鼓膜の奥の内耳にリンパ液が過剰にたまる内リンパ水腫(むくみ)によって起こると考えられています。この病気は突然に回転する「めまい」(時には不定のめまい)が現れ、吐き気を伴い、立っている事が出来ませんが、この発作は数分から数時間持続した後に次第に元に戻ります。耳鳴り・難聴は「めまい」と相前後して、あるいは同時に起こりますが、「めまい」が無くなるとともに消失します。耳鳴り・難聴を伴うことはメニエル氏病の診断にとって極めて重要でありますが、患者さんが発作中の「めまい」に気を取られ、その伴う症状に気づかぬ事もありますから注意を要します。時には「めまい」だけ、或いは耳鳴り・難聴だけの発作もありますが、むしろ例外的です。メニエル氏病と診断するためには十分な問診,後で述べます神経耳科学的検査を、時には経過観察を行うなど極めて慎重でなければなりません。また、この病気は繰り返し症状が起こるのが特徴です。その発作頻度は不定で、日に数回の発作から数年間にわたり発作が無いこともあります。めまい発作を繰り返しますと、発作のない間歇期にも耳鳴り・難聴が続き、肩こり・頭重感などを感ずるようになります。耳鳴り・難聴は一般的には片耳だけ(内耳は左右に各々1つで合計2つありますが)ですが、20~30%の率で両耳に発来することもあります。聴力は回復・悪化を繰り返しますが、最悪の場合は完全に聴力を失う こともあります。

この病気は40~50歳代の中年期に多く、稀にアレルギーや免疫異常によって発症する場合もありますが、多くは精神的,肉体的ストレスが誘引となり生活環境因子がこの病気の発生に関係が深いと言われます。発症する時間は夜間よりも朝,起床時に多く見られます。メニエル氏病の場合は内耳に原因がありますので、内科的検査,脳外科的検査やMRI等では異常を見出すことが少なく、神経耳科学的検査が必要になります。神経耳科学的検査とは平衡機能検査とも言い、平衡感覚や音の分析をつかさどる内耳の機能を調べるものです。まず十分な問診を行った後に、耳鼻科的検査(鼓膜所見・鼻内検査・聴力検査・レントゲン検査など),次に立ち直り検査,偏奇の検査で身体の平衡状態を、次いでENG(電気眼振電図)で眼球運動の異常の有無,体の重心の変動を調べる重心動揺計検査等を行います。これらの検査は耳鼻科領域でも特殊な検査ですので、耳鼻科の開業医で専門的な検査をを行う診療所は、私を含めて未だ少なく、大病院では「めまい外来」として標榜してあるところがありますので、そこで相談なさると良いでしょう(予約制が多いと思います)。

「めまい」を訴える病気はいろいろあることをお話しましたが、重要なことは「めまい」の原因が脳外科的疾患からか耳鼻科的疾患か、それとも他の病気,交通事故によるものかを判定・区別することです。また最近では、心理的ストレス,対人関係等の悪化による「心因性めまい」 が増加して話題になっております。

「めまい」を診療する医療機関として耳鼻科の他に脳外科,神経内科などがありますが、何れの診療科でも問診が最も重要な診断の根拠となりますので、めまい発作の状況,経過,時期,時間等をまとめ、整理してから受診されるのがベストと思います。耳鼻科領域である内耳の病気では、自分の病気の原因を知ることにより、「めまい」が発生し、また再発しても不安にならない様に、誘因の一つと考えられるストレスと上手く付き合い、精神的安静を保つことが最良の対策です。